眠る回遊魚

溢れるパッションを記録する場所

初心に返る『TRUMP』 #hxlTRUMP 女性版

(劇)ハンマーヘッドシャーク × LUCK UP『TRUMP』
6/13(木) 19時公演 女性版を観劇。
久し振りのシアターKASSAI。

 

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(劇)ハンマーヘッドシャーク × LUCKUP 『TRUMP』 - luckup ページ!


STORY

吸血種と人間の二つの種族が不可侵条約によって共存する世界。 
不死を失った吸血種は、人間とほとんど変わらない生活を送る。 
吸血種には人間でいう思春期を更に深刻化させた、繭期という成長過程が存在する。 
主人公ソフィ=アンダーソンは、吸血種と人間の混血「ダンピール」である。
繭期の吸血種を教育する施設「クラン」に入ったソフィは、そこでウル=デリコという吸血種と出会う。 
短命の運命を背負うダンピールであるソフィと接するうちに、ウルは永遠の命を持つという真なる吸血種、「TRUMP」の秘密を追い求めるようになる。 

そんな中、彼らはやがて 100年前の遺恨に囚われてゆく……

 

CAST

布施勇弥(♠,Q)       七海とろろ(♡,K)
新井裕士(♠,K)     小澤瑞季(♡,Q)
斎藤貴裕(♠,K)     滑川恭子(♡,Q)
織田俊輝(♠,Q)     柴田茉莉(♡,K)
岡部直弥(♠,K)     井上麗夢(♡,Q)
ZiZi(♠,Q)        荒木凪瑳(♡,K)
清野賢(♠,K)      橋本真衣乃(♡,Q)
港谷順(♠,Q)      安澄かえで(♡,K)
北原学(♠,K)         いわもとりな(♡,Q)
大石祥生(♠,Q)     結城亜実(♡,K)
上地慶(♠,K)         本倉さつき(♡,Q)
鎌田秀勝(♠,Q)     新田えみ(♡,K)
塚本拓弥(♠,K)        福田らん。(♡,Q)

ーアンサンブルー
境秀人(♠,K)       福嶋愛美(♡,K)
西垣和哉(♠,Q)      堀江茜音(♡,Q)


TRUMPシリーズ10周年記念企画のひとつ、上演権の解放で、この『TRUMP』という作品は2019年12月31日までに各地で上演が予定されている。
DVDに残らない小劇場公演だからこそ、こんな企画があってこう演じていた人たちがいたのだという記録を残しておきたいなと思ったので、ふせったーやプライベッターではなく久し振りに観劇ブログを更新した(まだ書けてないCOCOON総括感想のためのリハビリ的な面もある)

UST配信の再演Tが生みの親TRUMP。
山浦クラウスの狂気で沼に足を踏み入れたのにNU版で拗らせて、いつの間にかアンジェリコ様のオタクをしている人の感想です。
なんか長くなってしまったので、キャラ評だけ読みたい人は中盤すっ飛ばしてほしい。

(素人があれこれ書くことではないと重々承知の上で、個人的な記録として、気になった点についても色々書いています。ご了承下さい)

 


このhxlTRUMPの特筆すべき点は、男性ver.と女性ver.そして2種の男女シャッフルver.で上演されるところだ。T/Rでリバースするわけでないのに人数が単純に倍!
特に女性版……あれ、どう見てもクランの制服これスカートだぞ???と公演が始まるまでは混乱していた。再演でFemale版はあったけれど(参考: TRINITY THE TRUMP -Female- イメージダイジェスト - YouTube)あれは設定からして特殊な立ち位置の作品である。
今後も女性団体での上演が2件予定されてるので、その比較という意味でも見ておかねばと思って女性版のチケットを取った。

結論から言えば、なんのことはない。
スカート、絶対領域、ドレス……完全に女性のビジュアルでありながら、演じるのは原作に忠実な繭期の『少年』そして『男性』だった。
このアンバランスな感じが実に不思議で面白かった。演者は女性だけど、作中の関係性はやっぱり女性の距離感ではない。それでもなんだろう……見慣れたTRUMPとはちょっと見え方が違う。
決して広いとはいえない舞台には必要最小限のセット。演者の演技と、観客の想像力に委ねられる小劇場演劇。けれど演者が「少年たち」と言えば、あるいは「僕」「息子」と口にすれば、彼女たちは確かに「彼ら」になった。

西田シャトナー作品とかでよく感じるのだが、こういう、演者が「ここは宇宙だ」といえば舞台の上は宇宙になるような、お芝居の基本的なお約束が演劇の自由でいいところだなと思っているので、それを改めて感じた。
すでにTRUMPを履修している私には馴染みのクランのセットが見えたし、地下書庫には本が溢れていた。二階から、何も言わずに息子を見下ろすダリちゃんもいた。シリーズ初見の方がどこまで背景を幻視できたか定かではないが、それでも物語に引き込まれていた様子を見て、この『TRUMP』という作品は大阪の小劇場で上演された初演から確かに支持を得ていたのだなと実感する。

TRUMPシリーズのここ最近の新作、行間を埋めるどころかとんでもない量の情報でぶん殴ってくる。解釈違い絶対殺すマンかって思ったのはまた別の(繭星)話。このシリーズが広大である証左でもあり、素直に喜ばしいことなのだが……個人的には『TRUMP』の、まだ余白が色々あって、あれはどうなんだろう……と想像の旅に出られたところが好きだったので。
そういう意味で、初心に返れた気がした。
今このタイミングで小劇場のTRUMPを観られてよかったと思う。

戯曲は販売もされているソフィ・トリロジー収録のTRUMPが基本になっている。つまりは大体NU版。休憩なし2時間10分に収めるためにちょこちょこ摘んでるけど、NU版を育ての親TRUMPとする私は見覚えのあるシーンや台詞に始終ニコニコした。
教養室の日替わり懐かしい……当てられた1回目の生徒のラファエロモブは1と10しか数えられない子かもしれない……と思うくらい本編中とは印象が違って可愛かった。2回目のウルモブ、大変元気で思い切りがよくてよろしい。教養室でイキイキするミケちゃんが楽しそうで何より。

ところでフライヤー見ても「脚本:末満健一」の文字はないのだけど、そういうもんなのかな……?


演出で気になったのは、地下書庫で倒れたウルにラファエロが駆け寄るところ。あそこだけ異様に唐突だった。セコムお兄ちゃん……
あとジョルモロのギャグシーンが基本的にカットされてるので、ちょっと彼らがモブっぽくなっていたのが残念ではある。でもアンジェリコ様に抱きしめられてたのが羨ましいので帳消しだな!(夢ドブネズミ並感)
男性版にはギャグ100連発があると聞いて、観られないのが片手落ちで悔しい。

後ろに張られた幕を使うことによって懲罰房に空いた穴の表現や、灰になって消える際の退場ルートになるの、効果的で良かった!


殺陣。もう少し止めるところは止めるなどのメリハリがあると緊張感のある殺陣に見えたのでは。流れてだらっと見えてしまう部分があったので。


衣装。かなり二次元寄りの制服だなと思った。個人的にはもう少しスカートが長い方が好き。アイドルとして見るなら短いのもファンサのひとつなのだろうけど、同性としてはなんか……心配になるので。絶対領域とか倒れ込んだ時に露わになる太ももとか、物語への没入を妨げる気がする。
でもタイツの色がダンピールのソフィとウルだけ白だったり(ソフィは白黒衣装がわかりやすい)、人間である萬里が黒タイツだったり、そういう衣装の区別すき。


選曲がこうくるか!の連続なのは楽しかった。最近の末満さんはいかにもJ-pop的なのは使わないので(初演はそれこそVAMPSとか使ってたそうだが)
キャスパレがミディアムバラードな日本語曲、新鮮。転調でロックになるの良かった。
エターナルダンスが!エターナルダンスじゃなくて!すごい、青春だ……!?
剣術大会でのソフィ対ラファエロのシーンと、アンジェリコがウルを刺すシーンでバッハの「無伴奏ソナタ」が流れるの、本家のライネス代わりという訳じゃないが罪のイメージで良かった(舞台『無伴奏ソナタ』以降、個人的になんとなーく罪のイメージがついていたので)

アレクラのシーンで「ザナルカンドにて」が流れるのは反則では???

『最後かもしれないだろ。
 だから全部話しておきたいんだ──』

確かにそういうシーンだな!?(納得)

 


・ソフィ(七海とろろ)
凛とした少年。芯の強さを感じる。
冒頭とラスト、その長い長い生に飽いた様子が表情や空気から感じられてよかった。

最後のクラウスに咬まれたシーン、たまたま倒れ込んだ位置なのか演出なのか一公演しか見てないので判然としないが、少し呆気なくて恐怖感・嫌悪感といったジタバタした感じがないのと、本家と違って舞台に対して前後で(ソフィが客席に背を向けて)芝居するから「僕に何をしたんだ!」感があまり伝わらなかったのが少し残念。

カテコでぴょこぴょこしながらウルと仲良くはけるのがとっても可愛かった〜〜〜〜〜くそ〜〜〜ただ二人が仲良くあれる世界線よ来い〜〜〜〜〜!!!!


・ウル(小澤瑞季
青髪ウル!名門デリコの息子なのに青髪!さてはダリちゃん甘やかしたな……?というのはさておき、天真爛漫でぴょこぴょこ元気なウル。ソフィにとってウルはキラキラ輝いてた思い出だから彼は特別に鮮やかなのかな、と思った。

デリコ家秘伝の技の日替わり、A。「デリコ、デリコ、ウル・デリコ〜♪(山本リンダ狙いうち)」からのニワトリものまね。お疲れ様……!


「準決勝の君の相手はアンジェリコだ」のところだったかな?ソフィとウルがただ向かい合うんじゃなくて、立ち位置がずれてる(そのまま歩き出してもぶつからない)のが、2人の心のズレが可視化されていて良かった。

 

・クラウス(滑川恭子
TLの前評判通り、とってもクラウスだった。
まじで一切「ソフィ」には興味がないティーチャークラウス。「アレンの血」だけが大事だし興味があるし手に入れたいってのがひしひし伝わってきた。
ウルを撫でてから言い放つ「あなたの血はいい匂いがしないんだ」とか、ひゃ〜〜〜〜〜!ですよ!!!
滑川クラウスは狂気というのはまた違うのかな……アレンという星に渇望してしまった、ひとりぼっちの吸血種。


・アレン(柴田茉莉)
最初に出てきた時、ブラウスの第一ボタンは止めてないしリボンも緩めてるしで(この子、ルルミナといちゃいちゃしてきたのか……!)なんて考えてしまった。別にその時だけ特別ではなくいつもそんな様子だったので、自分なりのおしゃれなんだろう。ギャルか。中身は天真爛漫で、クラウスもこれは憧れちゃうだろ〜〜〜〜ってめちゃくちゃ納得した。


このアレンとクラウスに客席を納得させる力があったのは大きい。アレンとソフィの違いが本当に明確だったので、クラウスの求めたものも明確化されてより恐ろしさを感じることができた。

 

ラファエロ(井上麗夢)
クールな、けれど弟思いのお兄様。繭月履修後の繭期にはいろいろ刺さるものがある。ソフィが憧れるだけある、という感じ。
ソフィに「下等なダンピールめ」て言った後にそっとウルに視線を送る罪悪感の塊。父の期待に応えねばならない、応えたいプレッシャー。
硬い表情ばかりの中で教養室モブは癒し。


・アンジェリコ(荒木凪瑳)
COCOONで集大成を見てしまったアンジェリコ・フラ。だからこそ、このタイミングで他の役者がどう演じるのかに興味があった。

いっそ振り切れたぶりっ子というべきか、語尾に全部ハートつけてるのかみたいな。純血倶楽部に対してもめっちゃ撫で回すし可愛がってて、アイドルみたいな強気お嬢様!その可愛い可愛い猫撫で声と、ドスの効いた「ラ″フ″ァ″エ″ロ″ォ″……!」の差がすごい。

「皆よ!カワイイ笑顔!投げキッス!今日来てくれたお友だちへのファンサービスだ!」
さ、最高では……????
下賤の者にも優しいアンジェリコ様、しかし胸中に渦巻く特大の感情はただ一人だけに向けられているというのがひしひし伝わって良い。

剣術大会で勝ち上がる「勝者ラファエロ・デリコ!」のとこ、さすが僕のラファエロって感じで(あるいはこれから起こることを楽しみにしていて)ラファエロを見てふふんと笑うアンジェリコ様ちょうかわいい。

愛が強い、愛に溢れたアンジェリコ様だった。だからこそ憎悪に転じた際に振り切れてしまうんだろうな、というのがわかる。

後半のアンジェリコ様は泣き喚くし頭を床に叩きつけるし、さすが履修してらっしゃるだけあってCOCOONを摂取した後の繭期にめちゃくちゃ効く。泣き虫アンジェリコがいた……。゚(゚´ω`゚)゚。


カテコで二人視線を交わすの好き。
本当に想いがすれ違うラファジェリコ。この二人で繭月だったらどうなんだろう……なんて思わず考えた。

 

・臥萬里(橋本真衣乃)
めちゃくちゃ再演SPECTERの下川ノームの流れを汲んでません……?て思ったんだけど、よく考えたらここ稽古中の怪我によるキャス変があったんだった。えっ、橋本さん元はジョルジュだったの???それはそれで観たかったけど、萬里が大変しっくりきたので良い配役だった。登場時「ちっちゃい」て言われる。可愛い。24歳でサバ読んでクランに来てるのに違和感がない。


・ピエトロ(安澄かえで)
い、いい子〜〜〜〜〜アレンに振り回される苦労人。「なんだってよりにもよってクラウスなんかに知らせたんだ」の時の、外したイヤーマフをぎゅっと握りしめるところ良かった。あと安澄さんとても声の通りが良いのでそれだけで評価上がってしまう。


・ジョルジュ(いわもとりな)/モロー(結城亜実)
身長も同じくらい、ニコイチでアンジェリコ様に付き従うジョルモロ、かつてのベビメタのゆいもあか?した。可愛い。前述の通りちょっとモブ感があるのが残念だが、アンジェリコ様から非常に愛されてる純血倶楽部羨ましい。


ティーチャーグスタフ(本倉さつき)/ティーチャーミケランジェロ(新田えみ)
グスミケ仲がよろしい〜〜〜〜〜!
ミケちゃん美魔女!!!美魔女がおる!!!!
フラメンコ習っておられるのか、仕草がいちいちセクシーで大仰で楽しいミケちゃん。
尻に敷かれるグスタフ。いい。


・ダリ(福田らん。)
登場時のダリちゃんコールは残念ながら削られてしまったが(時間的な問題はあるしね)デリコ家秘伝の技シーン、本家並みに自由で楽しそうでいらっしゃったダリ卿。
ら、ラファエロを無視した……
お、おま〜〜〜〜〜!(繭星履修者の叫び)

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

ここからはシリーズ履修者としての宣伝。

もしも今回このhxl版で『TRUMP』という作品そのものに惹かれた方がいるならば、是非ともシリーズを追っていただきたい。

そもそもTRUMPシリーズとは……は公式を参照。

cocoon.westage.jp


・『TRUMP』2009年、2012年、2013年、2015年
hxl版の下敷きとなっているのは2015年のNU版hxlアンジェリコ様の違い、女性版はT、男性版はR参考?)(聞きかじりからのイメージ)

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・『LILIUM─少女純潔歌劇─』2014年
TRUMPのあとに是非とも見てほしい少女たちの物語。リアル繭期ともいえる年齢のアイドルが演じた、シリーズ屈指の名作。


・『SPECTER』2015年、2019年
TRUMPにも出てきた萬里が出てくるよ!(萬里のとこで名前をだした下川ノームは2019年版です)


・『グランギニョル』2017年
SPECTERの裏で起こるデリコ家の事件。若き日のダリ卿、そしてアンジェリコ様のお父上も出てくる。


・『マリーゴールド』2018年
LILIUMにも出てきた少女と関係する、母と子の話。
ソフィ、ウルも登場する。


・『COCOON 月の翳り星ひとつ』2019年
11月に円盤が出ます。ラファエロとアンジェリコの友情と決裂を描いた「月の翳り」、TRUMPのウルの視点で描かれた「星ひとつ」、シリーズ10周年のひとつの区切りの作品。

 

ここまで読んでくれてありがとう。
よい繭期を。(CVソフィ・アンダーソン)